鍵をなくして今すぐ家に入りたい、という切迫した状況では、とにかく早く来てくれる業者に依頼してしまいがちです。しかし、もし少しでも時間的な余裕がある、あるいはパニックにならずに冷静さを保てるのであれば、ぜひ実践してほしいのが「相見積もり」です。相見積もりとは、複数の業者から同じ条件で見積もりを取り、料金やサービス内容を比較検討すること。これを実行するかどうかで、最終的に支払う金額が大きく変わってくる可能性があるのです。なぜ相見積もりがそれほど重要なのでしょうか。その最大の理由は、一件の業者から提示された見積もりだけでは、その金額が果たして地域の相場から見て適正なのか、それとも割高なのかを判断する基準がないからです。例えば、A社が「二万円です」と言ったとします。緊急時であれば「そんなものか」と受け入れてしまうかもしれません。しかし、もしB社やC社にも問い合わせてみたら、「一万五千円でできます」という回答が得られるかもしれないのです。複数の業者に問い合わせることで、その地域や時間帯における大まかな相場観が自然と身につき、不当に高い料金設定の業者を避けることができます。また、料金だけでなく、電話応対の丁寧さや、到着までの予測時間、キャンセルポリシーなど、サービス全体の質を比較できるというメリットもあります。もちろん、真夜中で一刻を争うような状況では、相見積もりを取る余裕はないかもしれません。しかし、例えば日中のトラブルで、家族や友人の家で少し待つことができるような状況であれば、焦って一社に決めてしまう前に、少なくとも二、三社に電話をかけてみる価値は十分にあります。その一手間が、数千円、場合によっては一万円以上の無駄な出費を防ぎ、結果的に納得のいく業者選びにつながるのです。焦っている時こそ一呼吸置き、賢い消費者としての選択を心がけましょう。