ダイヤル式金庫の開錠に失敗する人が、最も陥りやすい罠。それは、ダイヤルを回す手順の途中で、「リセット」の重要性を見落としてしまうことです。正しい番号を知っているにもかかわらず、なぜか開かないという場合、このリセット操作を正しく行えていない可能性が非常に高いのです。ダイヤル式金庫の内部は、複数の円盤状の部品(座)で構成されており、ダイヤルを回すことで、これらの座を一つずつ正しい位置に揃えていきます。そして、全ての座の切り欠きが一直線に並んだ時に、初めて開錠が可能になります。この時、もし一つの座でも位置がずれていたら、金庫は絶対に開きません。「リセット」とは、このバラバラになった座の位置を、一旦全てクリアな状態に戻すための、いわば「準備体操」のようなものです。開錠作業を始める前には、必ずこのリセット操作を行わなければなりません。リセットの具体的な方法は、まずダイヤルを「右方向」に、最低でも四、五回以上、ぐるぐると回します。この操作により、内部の全ての座が連動して回転し、その位置関係が初期化されます。この最初の儀式を省略してしまうと、前回失敗した時のずれた座の位置が残ったまま、新たな操作を始めることになり、絶対に正しく揃えることはできません。そして、もう一つ重要なのが、操作途中でのリセットです。ダイヤルを回している最中に、合わせるべき数字を少しでも通り過ぎてしまった場合。「あ、行き過ぎた」と、逆方向に少し戻して修正しようとする人がいますが、これは絶対的なNG行為です。一度でも目盛りを行き過ぎたら、その時点でその座の位置は不正確になっています。その場合は、面倒でも、必ず最初の「右にぐるぐる回す」というリセット操作から、全ての工程をやり直さなければなりません。この「通り過ぎたら、最初から」という鉄則を守れるかどうかが、ダイヤル式金庫を開けられるかどうかの分かれ道と言っても過言ではありません。開かない時は、焦らず、深呼吸をして、まずはダイヤルを右に数回、ゆっくりと回すことから始めてみてください。その丁寧な一手間が、固く閉ざされた扉を開くための、最も確実な鍵となるのです。