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【自力で開ける】スーツケース鍵の開け方
専門業者を呼ぶほどではないけれど、どうしても今すぐスーツケースを開けたい。そんな時に試せる、いくつかの自力での鍵の開け方が存在します。ただし、これらの方法は、スーツケースを傷つけたり、ロック機構を破損させたりするリスクも伴うため、あくまで「自己責任」で、慎重に行うことが大前提です。ダイヤルロックの番号を忘れてしまった場合に、最も確実で地道な方法が、「000」から「999」まで、全ての番号の組み合わせを一つずつ試す「総当たり」です。三桁のダイヤルであれば、組み合わせは千通り。一通り試すのに数秒かかるとすると、理論上は三十分もあれば開く計算になります。時間と根気は必要ですが、スーツケースを傷つけることなく開けられる、最も安全な方法と言えるでしょう。次に、少し技術を要する方法として、ボールペンを使ったファスナーの破壊解錠があります。これは、ファスナーのエレメント(歯)の間に、ボールペンの先端のような硬くて細いものを突き刺し、こじ開けるというものです。一度こじ開けてしまえば、あとは指でスルスルとファスナーを開けていくことができます。中身を取り出した後、ロックされたままの引き手を両方向に動かすと、ファスナーが再び閉まることもありますが、一度破壊した部分は強度が落ちているため、防犯性は失われます。あくまで、中身を取り出すための緊急手段と考えるべきです。シリンダーキーを紛失した場合は、ピッキングに挑戦するという手もあります。ヘアピンや安全ピンを二本使い、一本で鍵穴内部のシリンダーにテンション(回転方向の力)をかけながら、もう一本で内部のピンを一つずつ押し上げていくというものです。しかし、これは非常に繊細な感覚と技術を要するため、素人が成功する確率は極めて低いと言わざるを得ません。
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その鍵穴は何?TSAロックの仕組み
最近のスーツケースのほとんどに採用されている「TSAロック」。自分の鍵で開ける鍵穴の他に、もう一つ、見慣れない鍵穴が付いていることに気づいた方も多いでしょう。この鍵穴こそが、TSAロックの最大の特徴であり、その仕組みを正しく理解しておくことは、特に海外旅行をする上で非常に重要です。TSAとは、「Transportation Security Administration(米国運輸保安局)」の略称です。2001年のアメリカ同時多発テロ以降、アメリカの空港(ハワイ、グアム、サイパンなどを含む)では、預け入れ手荷物の中身をTSAの職員が目視で検査することが義務付けられました。そのため、もし施錠されたスーツケースが検査対象となった場合、職員は鍵を破壊して中身を確認することが許可されているのです。これでは、せっかくのスーツケースが壊されてしまうことになりかねません。この問題を解決するために開発されたのが、TSAロックです。TSAロックは、持ち主自身が自分の鍵やダイヤル番号で施錠・解錠できるのはもちろんのこと、TSAの職員だけが持つことができる特殊な「マスターキー」で、ロックを破壊することなく解錠できる仕組みになっています。つまり、あの謎の鍵穴は、私たち旅行者が使うためのものではなく、空港の保安職員専用の「合鍵穴」なのです。もし、自分のスーツケースが検査を受けた場合、中には「TSAによって検査されました」という内容の通知書が入れられています。これにより、私たちは自分の荷物が正規の手続きで検査されたことを知ることができます。このTSAロックのおかげで、私たちは安心してスーツケースに鍵をかけ、アメリカ方面への旅行に出かけることができるのです。