警察からの電話や、親切な人からの連絡で、一度は諦めかけていた落とした鍵が、奇跡的に手元に戻ってきた。その時の安堵感と喜びは、計り知れないものがあるでしょう。これで鍵交換にかかる数万円の出費も免れたと、胸をなでおろすのも無理はありません。しかし、ここで一つ、冷静になって考えなければならない問題があります。それは、「見つかったから、もう安心」と、本当に言い切れるのか、という点です。鍵が見つかったとしても、そこには「落としてから見つかるまでの空白の時間」が存在します。その間に、あなたの鍵が誰の手に渡り、どのように扱われたのかを、完全に知る術はありません。もちろん、拾ってすぐに届けてくれた、心優しい人の手に渡った可能性が最も高いでしょう。しかし、もし、その前に悪意のある第三者が一時的にでも鍵を手にしていたとしたら。そのわずかな時間で、合鍵を複製されている可能性は、残念ながらゼロではないのです。特に、免許証や学生証など、住所が特定できるものと一緒に鍵を落としてしまった場合は、そのリスクは格段に高まります。たとえ鍵が手元に戻ってきても、どこかに自分の家の合鍵が存在するかもしれないという疑念は、あなたの心の中に小さなトゲのように残り続けるかもしれません。鍵の専門家の多くは、このようなケースでも、念のため鍵(シリンダー)を交換することを推奨しています。それは、万が一の、しかし起こってしまったら取り返しのつかない事態を、100%防ぐための、最も確実なリスク管理だからです。もちろん、最終的な判断は、あなた自身に委ねられます。鍵を落とした状況(人通りの多い場所か、すぐに気づいて探したかなど)や、見つかった経緯(警察経由か、店の人が保管してくれていたかなど)を考慮し、リスクの度合いを判断することになります。しかし、もし少しでも不安が残るのであれば、鍵を交換してしまうのが賢明な選択と言えるでしょう。数万円の費用で、これから先、何年も続くかもしれない「もしかしたら」という不安を取り除き、心からの安心を手に入れることができるのなら、それは決して高い買い物ではないはずです。
落とした鍵が見つかった!でも交換は必要か?