玄関の鍵が、最近どうも回りにくい。何度かガチャガチャやっているうちに、何とか回るからと、その場しのぎで使い続けてはいないでしょうか。その「まあ、まだ使えるから」という油断が、ある日突然、あなたを最悪の事態に陥れるかもしれません。鍵が回らない、あるいは回りにくいという症状を放置することには、私たちが思う以上に多くの危険性が潜んでいるのです。最も直接的で、誰にでも想像がつく危険は、「締め出される」または「閉じ込められる」リスクです。外出先から帰宅した時、ついに鍵が全く回らなくなり、家に入れなくなってしまう。あるいは、家の中から鍵をかけようとした瞬間に錠前が完全に故障し、外に出られなくなってしまう。このような事態は、特に一人暮らしの場合、誰の助けも呼べず、途方に暮れることになります。深夜や悪天候の中であれば、その深刻さは計り知れません。専門業者を呼ぶにしても、多額の費用と時間がかかります。次に、防犯上のリスクも深刻です。鍵が回りにくいということは、錠前の内部機構が正常に機能していない証拠です。これは、本来あるべき防犯性能が、著しく低下している状態を意味します。例えば、デッドボルト(かんぬき)が完全にかかりきっていない「半ロック」のような状態になっていると、空き巣などの侵入者に、わずかな隙を与えることになりかねません。正常な錠前であれば防げたはずの侵入を、自ら招き入れてしまう危険性があるのです。さらに、物理的な危険も伴います。回らない鍵を、毎日力ずくで無理やり回し続けていると、その負荷は蓄積され、ある日突然、鍵が金属疲労でポッキリと折れてしまう可能性があります。もし、鍵が鍵穴の中で折れてしまったら、事態はさらに悪化します。鍵穴から折れた破片を取り出す作業は非常に困難で、専門業者に依頼しても高額な費用がかかることが多く、最悪の場合は錠前全体の交換が必要になります。鍵が回りにくいという症状は、錠前が発している「もう限界です」という悲鳴であり、SOS信号です。そのサインを無視し続けることは、時限爆弾を抱えたまま生活するようなものです。大きなトラブルに見舞われる前に、不調を感じたその時点で、速やかに専門家に点検・修理を依頼すること。それが、あなたの安全と平穏な日常を守るための、最も賢明な選択なのです。